前回の続き。
残りの2つの話です。 case 2. 『お願いだから、無理しないで!』 話は入院したての頃に戻りますが、私の病室は4人入れる大部屋でした。 でも、私が入った時は、おばあちゃん二人しか居なくて、私が入ったことで3人になったところでした。 当然、私の隣のベッドは空いていて、続けて入ってくる予定っていうのは無かったそうです。 しかし、翌日、看護助手さんが慌しくベッドメイクをしているので、「あれ?まだ予定無いんじゃなかったんですか?」と尋ねたら、「緊急入院なんよ」との答えが返ってきたのです。 は~!緊急って・・・・交通事故とか??? どんな大怪我人が入ってくるのだろうと思っていたら、それより前に私の主治医であるK先生が現れて、「あぁ、ココで良いわ。とりあえず上がってもらうから急いで準備してあげて」とだけ言って、去っていきました。 ん?今、先生は外来の時間でしょ?? 即日入院に変わりないけど、救急が関わるような事故じゃないのかな? 疑問に思いながらも、ベッドが綺麗にされていく様を眺めていたら、こじんまりとした風格のおじいちゃんがキョロキョロと入ってきました。 控えめに会釈をされたので、私も会釈を返したのですが、どうやらこのおじいちゃんが今度入ってくる人の付き添いの人らしいということは悟れました。 しばらくして、完成したベッドが外に運ばれていき、戻ってきた時には、細~いおばあちゃんを寝かせて戻ってきました。 特に外傷であるとか、点滴の管であるとかは繋がっていないので、交通事故に遭ったとかではないようでした。 幸か不幸か、担当医も私と同じとなったみたいでした。 な~んだ・・・と思いつつも、あまりジロジロ見られるというのは、お互いに気分のよろしいものではないので、テレビを観たり本を読んだりと、普通にしていたのです。普通に・・・ が・・・・そうも言ってられないことが度々ありました。 今思えば、この御夫婦、ちょっと変わってたんですね。 旦那さん(おじいちゃん)はとても懇親的な方で、入院してから退院するまで、毎日お見舞いに来ていました。
奥さん(おばあちゃん)は・・・なんかちょっと我儘な感じの方でしたね。 外面は気が弱そうに見えるけど、実際は強いといった感じで、旦那さんに冷たい言い方とかするような方でした。同室の人間に対してそういうのは無かったですけど・・・ どうも傍から見てると、良くなろうとしていていないというか・・・我儘気儘な点しか目立たないんですよ。 出される食事は食べようとせず、「お腹空いてないのでいりません」とだけ言って、いかにも食欲がないかのように思えるわけですが、実は、旦那さんが買ってくるお寿司とかをがっつり食べてるからだっていう・・・(汗) それでいて、一日中グッタリと寝てることが多かったので、看護師さんや先生も何となく扱いづらそうにしてる感じでした。 後々、旦那さんからチラッと、重い病気に罹患してたこととかを聞いたので、このおばあちゃんの態度というのが、性格的な問題だけじゃなく、既住歴とかにも関係してくるのかもな~って思って、仕方ないことなのかな~なんて思いながら見ていたわけですが。。。 はい。 今回の話は、このおばあちゃんが中心になります。 このおばあちゃん、私が退院する1週間ほど前に退院していったわけですが、事件はおばあちゃんの退院の前日ぐらいに起きました。 おばあちゃんは背骨にリニアックを受けていて、私のギプスと張れるぐらいに頑丈なコルセットを即日入院後、急遽作成して巻いてました。 ただでさえ細く、背が高い方だったので、重心が定まらないというか・・・ 検査などに行く時は車椅子で助手さんに連れられて、日常生活の移動では歩行器を使ってる状態だったのです。 その日は、女性患者の入浴日で、このおばあちゃんも予定に組み込まれていたのです。 私は羨ましい限りでした。だってギプス装着中だったので入れないので・・・ 「良いですね~お風呂。久しぶりでしょう?」 「えぇ。もうね・・・頭もベタベタしてるし・・・」 「さっぱり出来ますね。羨ましい・・・私はコレなんで入れないんですもん」 「大変やね~。つけっぱなしで・・・」 「ホントですよ~。しかも前のよりキツ目で巻かれてるんです。アルコール綿で拭くにしても拭きにくくてね~」 なんて会話をしました。 入浴時間は一応予約になっていますが、前の人の状態で早まったり遅くなったりするので、順番が回ってきたら、看護師さんが部屋まで呼びに来てくれるのです。 患者側は、それまでに入浴道具や着替えを用意して待機してればいいわけですが・・・ 私はゴロ寝しながらテレビを観てたんです。夕方のワイドショーかドラマか何か・・・・ 奥のベッドのお二人のおばあちゃん、一人は部屋にいなくて、一人は担当に看護学生が付いていたので、何やらお喋りをしてました。 で、隣のおばあちゃん。 たぶん着替えとかの準備をしようとしていたのでしょう。 ゆったりとした動きで棚を開けてる音を背中で聞きました。 それは突然起きました。 ガシャッ!バターーーーンッッ!!!ガシャーン!! ものすごい大きな衝撃が床に向かって響きました。 ギョッとして振り返ると、なんと隣のおばあちゃんが仰向けで倒れ、歩行器がスーッと滑っていました。 何事ぉーーーー!!? 「○○さん!大丈夫!?」 奥のベッド脇のカーテン内に居た看護学生の子も飛び出してきて、倒れているおばあちゃんの上体を抱えました。 と言っても、彼女はオロオロしながら「大丈夫ですか!?」と言うばかり。 またこういう時に限って、廊下にも看護師一人通らないっていう事態。 集まってくるのは看護学生ばかり。しかもただ観ているだけの野次馬状態。 私も遂に起き上がって、おばあちゃんを抱えている看護学生に言いました。 「ナースコール、押そか?」 「あ、お願いします!!」 今気づいた!といった感じの返事に、彼女も動揺していたのだな~と思いました。 しかーし!タイミングの悪いことです。 いつもなら押したらすぐにスピーカーから「はい?どうしました?」って声がするのに、今日は何度押しても応答が無い。 来るのは看護学生か、その学校の先生だけ。 なぜか看護師がみんなで払っていたとかで、詰め所に誰も居ない状態だったそうです。 それから何分かして、ひょっこり現れたのは看護師長でした。 「何?誰も(ナースコールの呼び出しで)来てないの??」 「はい・・・」 「あらー・・・○○さん、どうしたのー?転んだの?」 師長が現れて間もなく、ゾロゾロと看護師さんがやってきて、病室内の飽和濃度が一気に増しました。 倒れたおばあちゃんは、やはり、自分で入浴準備をしようとしていた際、フラ付いてそのまま後に倒れたようでした。 棚の前に置いていた歩行器を掴まずに、しゃがんだり立ったりをして立ち眩みでも起きたのでしょう。 倒れる手前、慌てて歩行器を掴んだものの、背中に力が入らないため体制を戻せるわけも無く・・・ 動いた歩行器の音で振り返ろうとした私が当然第一発見者なわけで、師長から事情聴取をされる羽目に。 「~で・・・背中から倒れたって感じでした。ゴツンとか、頭を打ったっぽい音はしてなかったです」 幸い、コルセットを装備していたので、背骨がボキッとなることもなかったみたいでした。 その日、おばあちゃんのお風呂の誘導をするのが看護主任だったので、主任も申し訳なさそうにしながら「準備なら私がやったのに~」と言ってました。 それでも、やっぱり先生に診てもらった方がいいってことで、急いで先生を呼びにいってました。 「倒れたって?」 すごい人口密度な中、先生が足早にやってきました。 そんなに慌てる様子ではありませんでしたけど・・・ 私も気になっていたので、点けっ放しのテレビに向き直るわけにもいかず、師長と主任に挟まれて、ベッドに腰かけて見ていました。 「あー大丈夫大丈夫。骨は何とも無いわー。コレ(コルセット)着けてたから良かったなー。 着けてなかったら折れてたかも知れへんけどなー。でもビックリしたわなー!明日退院やのに」 いつもどおりの先生節に思わずガックリ肩が落ちました(汗) 落ち込んだんじゃないですよ?呆れてしまって・・・・ 「でも先生、背中が痛いそうなんですけど」 「骨は何とも無いから大丈夫。打撲程度やわ。心配やったら明日にでもレントゲン撮ろうか。朝一で予約入れとくからな。退院する前に撮って見とこか」 そう告げて、先生は颯爽と出て行かれました。 まぁ・・・うん。こんなものなのかもしれないですね。 先生が患者や看護師と一緒になって慌てふためかれても示しがつかないし、困るし・・・ でも、あんまりだ。 「それだけ・・・・?」 思ってることが口に出た瞬間でした。 「あれで終わりなんですか?」 「まぁ先生は冷静じゃないとアカンから・・・」 左隣に居た主任がフォローに入る形で言いました。 「でも・・・・ちょっと冷たい・・・なんかもうちょっとあっても・・・」 すると、右隣にいた師長がグルリと振り返りました。 顔を歪めてねちっこく一言。 「なぁ~?」 主任の言葉に賛同したのではありません。私の抗議にです。 なぜか、ゾゾゾ~っと背筋が冷えた気がしました。 それ以降は私も何も言えなくなりました。 結果的に、おばあちゃんの入浴は決行され、痛みもそんなに酷くなかったのか、夕刻には普通に座ったりしてました。 翌日のレントゲンでも異常は見られず、先生が言うように打撲で終わったようで、予定通り退院されたのです。 今回の話で怖かったのは・・・言わずもがな、師長と先生です。 確執を見てしまった気がします・・・ブルブル PR
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